このシンポジウムでは、これまでトランスパーソナル心理学の弱点とされてきた研究方法のあり方について、近年ダライ・ラマと認知科学者の対話などで注目を集める一人称の方法論を軸に検討していく。最初に、ユージン・ジェンドリンとともに、「Proposal for an International Group for a First Person Science」 を協同提案したドン・ジョンソン博士が基調講演を行う。講演では、身体の気づきを深めることと現象学的還元の関係など一人称のアプローチにおける課題を現象学がどのように扱うかについて示したうえで、二人称の科学のあり方をフランスのClaire Petitmanginの現象学的方法に言及しながら整理する。そのうえで、こうした一人称と二人称の探究について、瞑想と身心変容技法、痛みや老化などの不調和な体験、心理療法の効果という三つの視点から具体的な事例をあげて検討していく。
続くシンポジウムでは、基調講演を踏まえ、臨床心理学、哲学、宗教人類学の分野で身体に注目する三人の専門家を交えて自由な討議を進めていく。
基調講演者: ドン・ハンロン・ジョンソン博士
(California Institute of Integral Studies 教授)
シンポジスト:
シカゴ大学でユージン・ジェンドリンに学ぶ。日本におけるフォーカシング指向心理療法の第一人者。著書に「僕のフォーカシング=カウンセリング:ひとときの生を言い表す」(創元社)「こころのメッセージを聴く」(講談社現代新書)等
フッサール現象学における身体を専門テーマとし、近年はジェンドリンの体験過程理論と現象学の関係について精力的に研究活動を展開している。ヴァルデンフェルス著『講義・身体の現象学-身体という自己』の翻訳に携わる。
宗教人類学、哲学、チベット仏教を専門とし、人間の意識、生命、神経系に孕まれている膨大な可能性をひらくことが研究テーマ。主な著書に「瞑想する脳科学」(講談社選書メチエ)「野生の哲学」(筑摩書房)、訳書にナムカイ・ノルブ「夢の修行」(法蔵館)等。